
こんにちは、リブロス総合会計事務所のYです。
本日は、「居住用賃貸建物の仕入税額控除」についてのお話しです。
上記の消費税の取り扱いについては
2023年3月に、いわゆるムゲン・ADW事件※の最高裁の判決が出たことで少し話題になりました。
※(株)ムゲンエステート、(株)エー・ディー・ワークスに係る2件の税務訴訟
いずれの事件も、マンション販売業者が転売目的でマンションを仕入れたときの消費税の取り扱いとして「居住用賃貸建物の仕入税額控除」についてが争われました。
しかし、この居住用賃貸建物の仕入税額控除については令和2年度に改正があり、この事件で争われた点は現在解決されたこととなります。
令和2年度改正内容の概要は以下の通りです。
1)居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限(令和2年10月以後の取引に適用)
事業者が国内において行う、居住用賃貸建物の仕入れに係る消費税については、仕入税額控除ができません。
2)居住用賃貸建物の取得等に係る消費税額の調整
上記1)の適用を受けた建物については、下記の場合において仕入税額の調整があります。
①調整期間内に、事務所・店舗用等として貸付(課税賃貸)を行った。
②調整期間内に、建物を譲渡した。
※調整期間・・・建物の仕入日から、第三年度の課税期間の末日まで
※第三年度の課税期間・・・建物の仕入日の属する課税期間の初日から起算して、三年を経過する日の属する課税期間
なお、ここに出てくる居住用賃貸建物とは
「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって、高額特定資産又は調整対象自己建設高額資産に該当するもの」をいいます。
この「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」には
転売目的で取得した建物で、売却までの間に居住用として貸付をしないことが明らかなものが含まれています。
ムゲン・ADW事件においては、賃借人つきでマンションの仕入をするため、仕入から転売までの間に住宅の貸付に係る賃料収入が発生していました。
そのため、仕入れた建物の消費税について、どのように仕入税額控除を行うかが争われました。
(さらに、この更正処分により課された過少申告加算税についても争点となりました。)
現在では、居住用賃貸建物に該当するのであれば、仕入税額控除はできません。
その代わりに、一定期間内の調整規定が設けられています。
消費税の取り扱いには細心の注意を払う必要がありますね。